この法律は、障害のあるすべての人と障害のない人とが同じように、基本的人権を生まれながらに持つ個人としての尊厳を尊重され、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を持つことを確認し、すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、人格と個性をお互いに尊重しながら共に生きる社会の実現のために、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として 2016 年に施行されました。この法律のとても重要な視点が 2 つあります。
1 つは「社会モデル」であること、もう 1 つは「障害者手帳の有無に関わらない」ことです。
従来、障害を持つ人が生活のあらゆる場面で直面する障壁について、原因は心身の機能の障害そのものにあるとする「医学モデル」という考え方が一般的でした。そのため制限の解決方法が治療・リハビリテーションによる改善=障害のある人本人に求める傾向でした。
「社会モデル」は障壁の解決方法は、障害を持つ人に対する十分な配慮のない社会の仕組みに求める考え方です。
障害者の権利条約も同様で、障害者に対する考え方として、世界で主流となっている立ち位置で作られた法律だといえます。
また、この法律では「障害者」を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」と定義されていますので、障害者手帳を持つ人だけでなく、障害者手帳は持っていないものの、何らかの機能障害がある人も対象に含まれます。
◆不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供
この 2 つは障害者差別解消法の核となる 2 つの具体的な決まり事になります。
詳細は内閣府の発行している PDF に事例等も含めわかりやすく説明されていますのでここでは簡単な説明にとどめます。
これは国・都道府県・市町村などの役所、会社・お店などの事業者(ボランティアなどのグループも含まれます)が障害をもつ人に対して正当な理由なく、障害を理由とした差別をすることを禁止し、障害を持つ人が社会の中にある、バリアを取り除くための何かの対応を必要としている、という意思を伝えられた時に負担が重すぎない範囲で対応するように配慮(双方が合意できる合理的な配慮)を提供することを求めています。
この配慮には、言語(手話含む)、点字・拡大文字・筆談・身振りによる合図・触覚など様々な手段によって意思が伝えられる通訳や障害を持つ人の家族・支援者・介助者・法定代理人などの障害のある人のコミュニケーションを支援する人のサポートによって本人の意思が伝えらえることも含まれます。
この 2 つの義務に対しての大切なポイントは、2 つです。
1 つ目はお互いに無理がないこと、もう1つは、障害を持つ人本人からの発信が必要 という点です。
例えば、「障害を理由に財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが、客観的に見て正当な目的のもとに行われ、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合」などは障害をもつ人にその理由を説明し、理解を得るよう努めることも定めています。2 つ目は本人からの意思表示です。必要とされる配慮は一人一人異なるため、お互いに齟齬のない環境を作るために必ず必要な姿勢といえるでしょう。
また具体的な対応の基準が必要となるのが常なので、行政・事業者に対してそれぞれガイドラインを制定するよう勧められています。
(ご参考:厚労省作成の福祉事業者向けガイドライン)
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